
年金制度改正法成立~雇用実務への影響と対応ポイント〜
2025年に施行が始まる年金制度改正法は、高齢社会・労働人口減少に対応した抜本的な制度見直しです。中でも経営層や人事部門に関わる実務担当者にとって押さえておくべきポイントを整理しました。
1.短時間労働者の社会保険適用がさらに拡大へ
これまで厚生年金保険の加入要件として「週20時間以上」「賃金月額8.8万円以上」「企業規模51人以上」などがありましたが、今回の改正では以下の点が変わります:
- 賃金要件の撤廃:全国の最低賃金が一定水準に達することを条件に撤廃予定
- 企業規模要件の段階的撤廃:2027年10月1日~2035年10月1日にかけて、段階的に全企業に拡大
この変更により、多くのパート・アルバイトが社会保険の対象になります。対象者が増えることで保険料の企業負担は増加することが懸念されます。以下のような軽減策が用意されていますので、あわせて検討しましょう:
- 社会保険料の一部を国が支援(3年間の時限措置)
- キャリアアップ助成金による支援(最大75万円/人)
2.在職老齢年金の支給停止基準が緩和されます
高齢者が働きながら年金を受け取りやすくするため、支給停止となる基準額が「50万円→62万円」に引き上げられます(2026年4月施行)。これにより、約20万人が新たに年金を全額受け取れる見込みです。
高齢者雇用を進める企業にとっては、「働くと年金が減る」という心理的障壁が緩和され、人材確保にプラスとなるでしょう。
3.遺族年金の給付要件を男女平等に
18歳未満の子がいない20~50代の配偶者(主に男性)に対しても、原則5年間の有期給付が導入され、従来は受け取れなかったケースでも支給対象となります。また、支給継続や加算、要件緩和などの配慮措置も設けられています。
社会保険制度全体が「共働きモデル」へ対応する流れが強まっているといえるでしょう。
4.報酬上限の引き上げと年金額の底上げ
現在の標準報酬月額の上限(65万円)が、3年かけて75万円まで引き上げられます(2027~2029年施行)。これは高所得層の実態に対応しつつ、厚生年金全体の財政基盤を強化する狙いがあります。
給与制度の見直しや、報酬制度の設計に影響する可能性があるため、役員報酬の設定や大企業では特に留意が必要です。
5.私的年金制度(iDeCo・企業年金)の活用促進
- iDeCoの加入年齢上限が70歳未満に引き上げ
- 企業年金の運用状況の「見える化」が進み、厚労省が情報公開へ
高齢期の資産形成を促進する流れが加速しています。従業員の老後設計支援や福利厚生制度の拡充を検討している企業にとって、制度整備の好機となるでしょう。
6.今後の対応に向けて
今回の改正は段階的に施行されるものが多く、対応には中長期的な視点が求められます。
実務担当者に求められるチェックポイント:
- パート・アルバイトの社会保険加入対象者の確認
- 高齢者雇用方針の見直し
- 給与制度と年金負担のバランス確認
- 福利厚生(企業年金・確定拠出年金)の見直し
参考リンク
その他にも本改正では重要な改正がお送りますので、以下のリンクもご確認ください。
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