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労務トラブルQ&A~社員の身だしなみはどこまで制限できるのか?~

Q.クールビズの浸透やコロナ禍で在宅勤務が増えたこともあり、弊社では従業員の髪色やネイルの色が派手になったり、ノーネクタイや派手なシャツの着用、ひげを生やしている従業員もいます。身だしなみが乱れていると感じるので注意指導をしていきたいと考えているのですが、どこまで従業員の身だしなみを制限しても良いのでしょうか?

A.髪型や服装などの身だしなみは、本来個人の人格や自由に属する事柄であり尊重されるべきものですので、一律に規制することは困難です。企業の業種や従業員個別の職種や業務内容(社外関係者との接触が多いなど)等の事情を総合的に勘案し、企業の円滑な運営上必要かつ合理的な範囲内において制限を設けましょう。

・身だしなみに関する裁判例

身だしなみに関する裁判例として、イースタン・エアポートモータース事件(東京地裁昭和55年12月15日判決)があります。

この事案は,ハイヤー会社に勤務する運転手の口ひげについて争われた事案です。会社が当該運転手へ口ひげをそるよう業務命令をしたことにつき、これに従う義務があるかが争点となりました。裁判所は,禁止されるひげは不快感を伴う「無精ひげ」や「異様,奇異なひげ」を指しているとして,本件業務命令が必要かつ合理的であったとは認めがたい(口ひげをそる必要はない)と結論付けています。また、この裁判では継続的な取引先から苦情等の申し入れがないことなども会社主張を退ける理由とされています。

上記判例を踏まえると、社外の関係者と接触する機会の少ない業種(事務、SE、トラックドライバーなど)と比べ、不特定多数の社外関係者と接触する機会の多い業種(飲食店、サービス業、営業職など)のほうが、一般的に身だしなみによって企業へ与える影響が大きいと考えられるため、制限可能な範囲は広いと考えられます。また、工場や医療福祉の業種では、安全衛生面からも身だしなみの制限を設ける必要性が高いケースがあると思われます。

・身だしなみに関する会社対応

上記判例の通り、企業による従業員の身だしなみの制限は、企業の円滑な運営上必要かつ合理的な範囲内において認められます。

実際に身だしなみが乱れていると感じる従業員がいる場合、まずは就業規則の規定内容、自社の業種や業務内容、勤務場所や顧客からのクレームの有無などを確認しましょう。その上で、企業が当該身だしなみを制限する根拠、理由を伝えたり、本人の考えも聞きながら極力納得してもらえるように注意指導を行います。仮に改善が見られない場合は、懲戒処分に進む可能性もありますので、就業規則の該当条文を事前にしっかり確認しておきましょう。(懲戒処分を行う場合は、就業規則が周知されており、該当する懲戒事由が定められている必要があります。)

また、身だしなみに関する規定に細則を設けてより具体的に従業員へ周知するなど、予防策をとることも有効と思われます。

 

・まとめ

身だしなみに関するご相談は、特に飲食業や医療福祉業の企業様に多い印象です。

身だしなみについては、LGBTQなど他の論点が加わることもありますが、個人の感覚での判断は場合によっては企業のリスクになり得ます。本来身だしなみは本人の自由であることを念頭に置き、個別具体的に自社、従業員の状況を踏まえ、ルールを検討していきましょう。

 

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